お年寄りや子どもが犠牲になる交通事故が後をたたず、埼玉県警が住宅街や通学路などの「生活道路」で安全対策を続けている。
柱は神出鬼没な速度違反の取り締まりができる「可搬式オービス」の運用。運転者に「埼玉の狭い道では高速度を出せない」という意識を根付かせることが狙いだ。効果はあるのか――。記者が運用の現場を訪ねた。
10月下旬の平日の午後。さいたま市見沼区の閑静な住宅街の歩道に、可搬式オービスが設置された。高速度の車両を自動で撮影・記録する機器を三脚が支える作りで、重量は10キロほど。交通機動隊の隊員が2人がかりで搬送用の車両から降ろし、地面に固定した。
現場はセンターラインのない幅員7・1メートルの道で、規制速度は時速40キロ。警察官らは100メートルほど離れた場所に、「速度違反取締中」と記載された看板を置き、すぐに取り締まりを始めた。到着からわずか15分ほどだ。近くには小学校があり、下校中の児童らが次々と歩道を歩いていった。
運転者が看板を見ているためか、高速度で走る車両はいない。約1時間の取り締まりの間、多数の車両が現場を通り過ぎたが、オービスが速度に反応し、自動撮影することはなかった。
盗難を防ぐために立ち会った警察官が記者に言った。
「運転者に、狭い道でも速度違反をしてはいけないと意識付けることで、事故を防ぐことです。切符を切るための活動ではないので、これでいいんです」
警察官らはオービスを車両に積み込み、次の取り締まり現場に向かった。
埼玉県は全国に先駆けて導入
埼玉県警は昨年1年間に可搬式オービスによる速度違反の取り締まりを384回実施し、432件の違反を摘発した。今年は8月までに371回、549件と昨年を大きく上回るペースだ。
初めて導入したのは2016…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル